2016年2月29日月曜日

J. Cole - "Be Free" 和訳

近年深刻化する警察の黒人への暴力、殺害に対してJ. Coleが発表した曲。この日のデヴィッドレターマンショー(アメリカの深夜の長寿トーク番組)は彼にとって2014 Forest Hills Drive発売後初のテレビ出演だった。誰もがアルバム内の曲を披露することを期待する中、J. Coleはあえてその注目を利用して新たなラップパートも加えたこの曲を披露した。曲を紹介する際にジョークを言っていたレターマンが言葉を失い、盛大な拍手で迎え入れた観客(ほとんどが富裕層の高齢の白人)が曲が終わる瞬間に沈黙する様子が、いかにこのパフォーマンスが衝撃的だったかを物語っている。


J. Coleがこの曲を発表した時に添えたメッセージ

「自分の人生ばかり気にしている時期があった。チャンスを得るたびに叫びまくってさ、ガキだったんだよな。大学にいる時は世界を救おうとするのは簡単だったんだ。時間は溢れるほどあって、その上責任も負わなくて済むからね。でもそのうち人生は容赦なくぶつかってくる。その部屋だって食事だってもう保証されてないんだ。払い戻し小切手だってもうなくなる。職を得なきゃいけない、家賃を払わなきゃいけない、車を買って、ケーブル代を払って、一緒に住み始めた彼女はいずれ妻になり、子供が生まれ、出世して、インスタグラムが流行って、レブロンがマイアミを出てって・・・、人生は容赦なくぶつかってくる。人生に振り回され、そのうちまともな感覚が麻痺してしまう。俺はそうだった。でももう違う。だってこれは自分の身にも起こりうることだから、いつ何時でも。犠牲者は俺の親友のあいつだったかもしれない。もう黒人が殺されることを当たり前のように感じてしまう自分にうんざりなんだ。それが警官によるものだろうが、仲間内のことであろうが、そんなのはもう関係ない。とにかくこれは普通じゃないんだ。

マイクブラウンや、アメリカで殺されてしまった若い黒人の青年たち、どうか安らかに眠ってくれ。俺は祈るよ、いつかこの世界が平和で満ちた世の中になることを。その時が来た時、俺たちは本当の意味で自由になれるんだ。」





[Verse 1]

俺は認めない(黒人の地位は平等であるということ)

X線を通しても俺の笑顔は見れないよ(人の顔の骨格は笑っているように見えるが)

わかってる、それでも生きていかなきゃいけないんだ

どんなに酒を飲んでも、この魂の痛みを紛らわすことはできない


[Hook]

俺たちはただこの鎖を外したいだけ

ただこの鎖を断ち切りたいだけなんだ

俺たちの望みは自由になること

ただ自由になりたいだけなんだ


[Verse 2]

誰か教えてくれよ

なんで外に出るたびに仲間が死ぬのを見なくちゃいけないんだ

お前に教えてやるよ

どんな銃だって俺の魂を殺すことはできない

絶対に


[Hook]

俺たちはただこの鎖を外したいだけ

ただこの鎖を断ち切りたいだけなんだ

俺たちの望みは自由になること

ただ自由になりたいだけなんだ


[Verse 3]

このチェーンは気にしないでくれ(JAY Zにもらったオリジナルのロカフェラのチェーン)

俺はチャンスをくれたJAY Zに永遠に感謝するよ

俺たちはオバマが当選した時大騒ぎだったよな、彼が大統領のオフィスを去る最後の日に、政府がアメリカ中のブラザーに(奴隷労働の)賠償金を払うって言わないかって期待してんだ

俺たちだって夢を持てる、そうじゃないのか?(*キング牧師のI Have A Dreamにかけて)

オバマは尊敬してるけど、2期目になってもまだチェンジ(1期目の選挙スローガン)が見えないよ

きっと彼は正しい道を目指してた、でも(大統領でも)変えられないシステムがもう出来上がっちまってんだ

彼でも変えられないって事実を知った時はすげぇ悲しくなってさ

それが俺にたくさんのことを考えさせたよ、この世界の公平さっていうのかな

だってやっとブラザーが舵取りを始めたって時に、なんで誰も船が沈んでいってることを教えてあげなかったんだ?(*オバマが大統領になった時期はリーマンショック直後の世界不況の真っ最中)

そんな時ですら俺は他のくだらないことばっか考えてた

口座にいくらあるかとかさ

その腕時計のことなんて忘れろ、そんなことばかり気にしすぎなんだ

恥を知るべきだ

地元の仲間達は季節が変わることに怯えてるんだぞ

だって家に暖がないから、エアコンもないんだ

ウォルマートは俺の親友をクビにしやがった、あいつのとこにはちょうど子供が生まれたばっかだってのに(*アメリカのウォルマートの戦略は、地元に根付いた小売店を潰して職を失った人を低賃金で働かせること。そのウォルマートを解雇されたらもう働く場所がない)

なんで最近こんなにB&E(窓を割って侵入する空き巣)が頻発するのかって?

フッドのブラザーたちにとっちゃ銃撃(shooting)はTNTのような日常なんだ(*TNTNBAを放送するTV局。バスケのシュートとかけて、試合中継くらい毎日起きてるという意味)

ボーラーたちがすぐに大学から出てくようになってから

テレビの中に学位をもったブラザーが誰もいなくなっちまった(*NBANFLがドラフトに年齢制限を設けてから、プロ入りまでの時間稼ぎのためだけに大学に行き一年で中退する選手がほとんどになった)

[Bridge]

俺らは取り残されちまったのか?自分たちだけで戦なくちゃいけないのか?

俺にチャンスをくれ、もうダンスなんかしたくないよ(*ショービズ界でしか黒人が成功できない現状)

何かが俺の気持ちを落とすんだ、でも立ち上がって行動を起こさなきゃ

ただ突っ立ってるだけはやめた、もう見過ごすだけはやめたんだ


[Hook]

俺たちの望みは自由になること

ただ自由になりたいだけ

この鎖を外したいだけなんだ

J. Cole - "Note to Self" 和訳

“2014 Forest Hills Drive”のエンドクレジット。J. Coleが自分を支えてくれた大切な人々に感謝を読み上げる。このアルバムのリリースは2014年の年末に突如発表され、その3週間後に発売された。事前のプロモーションは一切なし。にもかかわらずアルバムはアメリカをはじめとする世界各国で初登場1位を記録。12月の一ヶ月間だけで2014年に発売されたどのラップアルバムよりも高い売り上げを記録した。またこのアルバムはここ25年間の音楽業界で唯一フューチャリングなしでプラチナ認定(100万枚)されたアルバムとなった。

またアルバムのリリースを記念して大型バスで全米中のファンに会いに行く”Fuck Money Spread Love Tour”を決行。道中大学に立ち寄り若者たちの質問に答えたり、自らの体験、夢を追うことの大切さなどを語りかけた。


近年深刻化するBlack Lives Matter運動にも積極的に参加。お忍びでデモ行進に加わったりもしている。  





丸腰の18歳の黒人少年マイクブラウンが手を挙げてひざまずいていたにもかかわらず警官に射殺された事件では、いち早く現場に駆けつけて黙祷を捧げた。




“Forest Hills Drive Tour”の中休み期間中にはチケット代1ドルの”Dollar and A Dream Tour”を開催。またその期間中、ある女子高生に会うためにツアーの日程を変更した。その女子学生の両親は共に薬物中毒で刑務所の出入りを繰り返していて、彼女自身は他家で養子として育てられていた。そんな彼女がJ. Coleの音楽を励みに勉強を頑張っていること、刑務所にいる両親の代わりに高校の卒業式に参加してほしいことなどを手紙にしたため彼に送ったところ、彼は「2年後に志望する4年制大学に合格したら卒業式に出席する」と約束。彼女はそれを見事達成し、Coleは彼女との約束を果たすためツアーの日程を変更して彼女に会いに行った。彼女に感銘を受けたColeは自らの愛読書をプレゼントし、また進学後の学費の援助を申し出た。彼女はこの日のことについてこう語っている。

「私の卒業式に合わせてツアーの日程まで調整してくれて、もう感謝の気持ちでいっぱいです。2年前に手紙の返事をもらってから、毎日この日が来ることを願っていました。彼は音楽を通じて自分の葛藤、人生をどう生きるかを多くの人に伝えています。彼はどんな困難も強い気持ちを持って乗り越えて、今のポジションにたどり着いた。今度は私の番。将来あの時の彼女がこうなったと彼が誇りに思ってもらえるような人生にしたいです」




自分に正直で嘘偽りのない彼の音楽は多くの人々にインスピレーションを与え、ファンの心を動かし続けている。




[Hook]

どこに行こうと

何をしようと

何を見ようと

何者になろうと

それは問題じゃない

それは問題じゃない

俺は気にしない、だってそれはお前には関係ないから

俺は気にしない、だってそれは俺には関係ないから

(全く問題じゃない)

お前もいつかわかるよ


[Bridge]

もっと大きな何かを感じるんだ

俺たちをつなぎとめる何かを

俺たちを結びつける何かを

おかしな感覚で、はっきりとはわからないんだけど

古くからある永遠の何かを

ずっと昔からある永遠の何かを

Love

Love

Love

Love


[Hook]

どこに行こうと

何をしようと

何を見ようと

何者になろうと

それは問題じゃない

それは問題じゃない

俺は気にしない、だってそれはお前には関係ないから

俺は気にしない、だってそれは俺には関係ないから

(全く問題じゃない)


お前もいつかわかるよ