2016年3月6日日曜日

Kendrick Lamar - "2016 Grammy Performance" 和訳

2016年のグラミー賞授賞式でのパフォーマンス。この年の候補者最多の11部門のノミネートで注目を集めていたケンドリックラマー。それと同時にリハーサルを見た司会のLL Cool Jが「議論を呼ぶだろう」と予告したパフォーマンスにも注目が集まった。LLの言葉通り、刑務所を模したセットで白人の黒人差別を糾弾する曲”The Blacker the Berry”から始まり、警官のマイノリティーへの不条理な暴力、殺害に対して「俺たちは大丈夫だ」と勇気付ける曲”Alright”、そして最後に2012年に自警団を名乗る男に丸腰で射殺された(犯人は不起訴で無罪放免)17歳だった黒人少年Trayvon Martinに捧げるフリースタイルを披露。決して権力を非難するだけで終わらず、こんな不公平な社会だからこそ彼がやらなければいけないこと、差別の被害者がやらなければいけないこと、アメリカという社会に生きる全員が一丸となってやらなければいけないことにも言及。もちろんこのパフォーマンスはこの夜一番のハイライトとなり、音楽界最大の祭典で大きな衝撃を残した。




The Blacker the Berry

[Verse 1]

俺は2015年最悪の偽善者だ

俺は2015年最悪の偽善者だ

この曲を最後まで聞けばこの意味がわかるだろう(*このパフォーマンスでは一番のみの披露だったが、この曲のクライマックスでなぜ彼が偽善者なのかが明かされる)

俺は16歳の頃から知ってるんだ、直感的に気づいた

お前らは俺らのことは決して好きにはならねぇ、友情なんてクソ喰らえ、本気で言ってんだ

俺はアフリカンアメリカンだ、アフリカンだ

月のように黒い(*NYのヒップホップグループBlack Moonより)

今や遺跡となってる小さな村出身だ、どこの家かは知らねぇけど(*アフリカで突然白人によって誘拐されたから)

人類の最底辺からやってきた

髪は縮れてて、アソコはでかくて、鼻は潰れて広がってる

俺のこと嫌いなんだろ?

お前は俺たちを嫌ってんだ、お前らの計画は俺たちの文化を根絶することだったよな

この邪悪なクソ野郎が、お前らがまだ俺のことをを利口なサルのままだと思っててほしいよ

お前らは俺の才能を汚したつもりだろうが、俺のスタイルは奪えねぇ

これは「告白」なんてもんじゃねぇ

つまり俺はボタンを押しちまったんだ、俺の力を思い知ることになるだろう

俺は俺自身の感情を守り抜く、お前も感じるだろ

お前は俺のコミュニティーをめちゃくちゃにして殺し合いをさせてんだ

俺を殺人犯にしようとしてんだ、さぁ「ホンモノ」のニガの解放だ!(*リンカンの「奴隷解放」から)


[Interlurde]

お前が欲しいもんを

お前らにくれてやるよ(*Notorious B.I.G.のサンプリング)

俺の身体を縛っても俺の心までは奪えない(*JAY Zのサンプリング)

みんな、止まれ!!


[Hook]

あいつらは俺を奴隷のように扱う、俺を「クロ」と呼ぶ

俺たちは積み上げられた痛みを感じる、俺らは「クロ」と呼ばれる

そしてあいつは俺を鎖のチェーンの中にねじ込む、俺らを「クロ」と呼ぶ

それが今やでっかい宝石付きの黄金のチェーンだ

かつて鞭(whip)で叩かれた、傷は背中(back)に残っている

でも今や高級車(whip)を専用区画(block)に駐車する

あいつらみんな俺らは絶望から始まるって言いやがる、俺らを「クロ」と呼び

でも覚えときな、すべての人種はブロックからスタートするんだ、忘れるなよ(*陸上のスターティングブロックとかけて。アメリカに来た移民は、白人であってもスタートはみな貧乏で差別される立場だった)


Alright

[Intro]

俺たちは大丈夫だ

俺たちは大丈夫だ

俺たちは大丈夫だ

俺たちは大丈夫だ・・・


[Verse 1]

俺が目覚めた時

お前が賃下げのことで俺を見ていることに気づいた

でも「殺人」がお前を見下ろしているのも見えた

俺のマック11が轟音を立てる

しっかり計画しろ!俺の人生をお前に教えてやるよ

鎮痛剤のみが俺を安心させてくれる

セックスとカネだけが人生のハイライト

ママ、愛してるけどこれが俺のやりたいことなんだ、神は知ってる

シヴォレーに20コ乗っけて、捕まえてみろって言ってやる

因果応報で全て回っていつかはカルマ(代償)がやってくる

天国はあらかじめ俺の曲を聴いててくれたりしない

俺は曲の沈黙(曲の外=実生活)ではクソみたいなギャングスタだ

世界中にもう手遅れだって伝えるんだ

少年少女たちよ、俺はおかしくなっちまうみたいだ

毎日悪行にまみれて

どうか俺の言うことを聞いてくれないか


[Pre-Hook]

知ってるか

俺らはずっと痛めつけられ、押し付けられてきた

プライドは堕とされ

世界を見ながら言うんだ「どこに行けばいいんだ?」って

俺たちは警官が嫌いだ

俺たちを殺して路上で死んでるところを見たいんだ

聖職者の前に立っている

膝は震えてるし、銃をぶっ放しちまうかも

でも俺たちは大丈夫だ


[Hook]

俺たちは大丈夫だ

俺たちは大丈夫だ

俺たちは大丈夫だ

聞こえるか?感じるか?俺たちは大丈夫だ

俺たちは大丈夫だ

俺たちは大丈夫だ

俺たちは大丈夫だ

聞こえるか?感じるか?俺たちは大丈夫だ


[Verse 2]

何が欲しい?家か?自動車か?

40エーカーの土地にロバ?ピアノ?ギター?

何でもござれ、私の名前はルーシー(悪魔ルシファー)、お前の犬(召使)だ

(くそっお前だったらショピングモールにだって住めるってのによ)

俺には悪魔が見える、わかる、これは違法なんだって

何も考えず、また桁を増やしていく

仲間のことを考えて、キャンディーを置いて、ビュイックリーガルのペイントをする

ポケットを探っても、お前(ルシファー)を食わせてくだけの利益は得られない(*いくら散財しても無限の欲は満たせない)

毎日お前をつなぎとめるために金を稼いで

そしてチコの前に行くと・・・痛っ!!(*チコは映画”Friday”の番犬。犬に噛まれる=欲を追って痛い目に逢う)

その話はやめよう、やめとこう、それが毎日なんだ

その話はやめよう、やめとこう、それが毎日なんだ

その話はやめよう、やめとこう、それが毎日なんだ

その話はやめよう、やめとこう、それが毎日なんだ

ペットの犬、ペットの犬、ペットの犬、俺の犬、以上だ

いつでも話してやるさ、逆にお前をハメてやるよ

俺はラップする、黒人だ、みんなわかってんだろ

俺の善も、俺の悪も、ずっと描き続けていく

最後の審判のその時まで


Untitled

もうあれから1週間

どれだけ自分が無力かって感じ始めてる

感情は煮詰まって、あの時もしこうだったらなんて考え始めている

状況は深刻だ、早く解決法を出さなくちゃ

2月26日(トレイヴォンの命日)、俺の魂も死んでしまった

俺は漆黒の夢の中にいるようだ

その録音された叫び声が俺を悪夢へと誘う(*トレイヴォンが射殺される直前の悲鳴を近隣住民は録音していた)

聞こえ方がおかしいというけど、それが誰の声だか知ってたはずだ(*その録音テープは裁判で証拠として認められなかった)

それは彼が血の気が引いた顔で助けを求めた時の俺の叫びだ

なぜ彼は自己防衛しなかった?なぜ彼は殴ることすらできなかったんだ?

俺たちのコミュニティーではこれはどういうことかわかるか?

憎悪の審理を追加するだけだ(*いかなる状況で正当防衛であっても黒人が暴力を使用したら裁判で不利になる)

2012年は世界が見るために録画された

400年前に戻ったことを

これは現代の奴隷制度

俺がお前の家の隣にいる理由

お前がブリーフケースをソファーの上に放り投げて

俺はお前ん家のドアに忍び込んで吹き飛ばすんだ

お前の脳みそをバラバラにして

お前の背骨が腕から滴り落ちるくらいに

俺はエンジンを切ってロールスロイスを停めるんだ

俺は聖書を頼りにする

ウォッカを飲み干して

どうやったら名声を長引かせられるか

どうしたらみんなに知られるようになる?

力を自由に操りたい

どうしたらみんなに気づかせられる?

この力を良い方向に使いたい

日々不安の中で生きている

酒を飲まずにはやってられない

彼の妹に手を上げて

社会ではなんとか生きていこうとする

公平は自由とは違う

だから俺は公平ではない

証言するまで何も言えない、新たな死亡記事を待つのみ

なぜお前たちは見たがる?

心を傷つけられた善人の姿を

はるか昔は俺も教会に行って神と話してた

今自分自身を振り返れば

銃弾しか持っているものがない

酒に溺れてる

ゲットーの果てで

俺がお前の家の隣にいる理由

お前がブリーフケースをソファーの上に放り投げて

俺はお前ん家のドアに忍び込んで吹き飛ばすんだ

お前の脳みそをバラバラにして

お前の背骨が腕から滴り落ちるくらいに

俺はエンジンを切ってロールスロイスを停めるんだ

ハイパワー(heart)だ!おいお前ら見えるか!(*Hiii Powerは2011年のケンドリックの曲から始まった、自信、誇り、尊厳を意味する3本指を立てるムーブメント)

ハイパワー(honor)だ!おいお前ら見えるか!

ハイパワー(respect)だ!おいお前ら見えるか!


この国一丸となっての対話こそが俺らが本当にしなきゃいけないことなんだ!