2016年9月21日水曜日

Jay Z - "The War on Drugs Is an Epic Fail" 和訳

Jay Zがニューヨークタイムズ紙に寄稿した社説のショートフィルムから。タイトルの意味は「麻薬戦争は最悪の失敗」。自身も過去にドラッグディーラーであった彼が、ニクソン大統領とレーガン大統領によって活発化されたアメリカにおける麻薬撲滅活動のその現状と問題点について指摘。



http://www.nytimes.com/2016/09/15/opinion/jay-z-the-war-on-drugs-is-an-epic-fail.html




1986年、俺が二十歳を迎えた年、ロナルドレーガンは「麻薬戦争」を二倍に強化した

それはリチャードニクソンが1971年に始めたものだ

「ドラッグは悪いもの」

「脳みそを溶かす」

「ドラッグディーラーはモンスターだ」

都市や近所を退廃させた最大の理由だ

誰もレーガノミクスが社会福祉を終わらせたことを語りたがろうとしなかった

アメリカ中の学校を廃校にし、職の数を減らしたということを



俺のようなドラッグを売っていた若者たちが唯一の悪者にされ、薬物中毒者たちはモラルのない落伍者だとされた

1990年代、米国内の刑務所の収監率は飛躍的に上昇した

現在この国は他の世界中のどの国よりも囚人を抱えている

中国、ロシア、イラン、キューバ

全て俺たちが抑圧的な独裁国家と呼んでいる国々

そう、そんな国々よりも




裁判官は刑法を厳罰化し、軽微なドラッグの所持に対してさえ強制実刑判決を下すようになった

俺の故郷のニューヨーク州はこれをロックフェラー法という法の名の下に始めた

そして政府は粉末状のコカインの売人とクラックコカインの売人を区別した

この二つは同じドラッグだというのに

ただ一つ違うのはその摂取方法だけだ

実際白人の方がドラッグの売買でも使用でも黒人よりも数が多いのに

なぜだか黒人だけが刑務所へ行く

今でもマスコミは現実のデータを無視し続けている

クラックは未だに黒人の問題として語られる


ニューヨーク市警がブルックリンの地区をガサ入れしている最中に

マンハッタンの証券マンたちは白昼堂々とコカインを使用しても逮捕されない

麻薬戦争は米国の刑務所における黒人とラテン系が占める人口比率を爆発的に上げた

米国の刑務所の囚人数は9倍に膨れ上がった

麻薬戦争が始まった1971年、囚人の数は20万人

現在は200万人以上だ



長いクラック流行の時代が終わっても、麻薬戦争は続けられた

2014年には150万のドラッグに関する逮捕があった

その80%以上は単なる所持

そのほぼ半分が大麻だった

人々はついにハードドラッグへの依存は健康問題の一つであるということを話し始めた

だがそれでもドラッグディーラーへの処遇については熱心に語りたがろうとしない

それでもコロラドのような場所

大麻を解禁したことで経済状況を急激に回復させたことについては日々話題にしている


南部のルイジアナのようないくつかの州では

未だに大麻の売買で強制実刑判決が下される

今や500億ドル規模の合法な大麻産業が成長しているというのに

多くの州では未だ不釣り合いなほどに黒人とラテン系にドラッグ関連の事例で強制実刑判決が下されている



もし起業精神にあふれた人が、今や数多くある大麻合法の州に移り住んだとしても

この急成長中の業界に参入する際に壁に直面するかもしれない

ベンチャー投資家たちは続々とそれらの州に移住し数百億ドル規模のビジネスを起こしている

しかし前科者は起業することができないのだ

その前科者の多くは(今や合法の)ドラッグ関連で前科がついた

そのほとんどは貧乏人で、生きるためにドラッグを売っていた

なのに現在急激な成長を続けている業界へ参加することを禁止されているんだ

意味わかるか?



ニューヨーク州のような場所では、もはや大麻の所持だけでは逮捕の対象にはなりえない

警察の薬物所持に対する検挙率は黒人とラテン系の住む地区が他の地区に比べて圧倒的に高い

クラウンハイツ(ブルックリンの黒人地区)に住む子供達は頻繁に警察に呼び止められ身体検査をされる

コロンビア大学の寮に住む子供達はマリファナの使用率がそれらの地区の同等かそれ以上あるにもかかわらず、警察に狙われることはない

現在の薬物乱用率はニクソンが薬物戦争を宣言した1971年と同じだ

45年経った今、俺たちの政治と法律について考え直す時だ


麻薬戦争は最悪の失敗だった